90's HIP HOPの呪いと"Hustlin' Wallet"制作までの経緯
ULとハスリン
text by shiro kojima(kawarakidake)
僕が中学生だった当時なぜか突然我が家に導入された革命が栃木ケーブルテレビ。そこにチャンネルで入っていたMTVやスペースシャワーTVのサブカル番組を観て、日立のVHSに少しづつ録画するのが好きな子供だった。その頃特に観ていたMTVの番組"MTV JAMS"で流れていたPVで多かったのが、道端に置いたドラム缶で焚き火するNYのラッパーが、3XLくらいのブカブカのパーカーのフードを被って"何か"の煙を吸い、首を縦に振りながらラップするシーンだった。それをこたつに入ってみかんでも頬張りながら(隣では母ちゃんが洗濯物を畳んでいる)異国のカルチャーをドキドキしながら眺めていた中学生時代だった。
その後ブラックミュージックに傾倒、更にヒップホップが好きになり、自分なりに過去の作品を掘っていくと、RUN DMCがADIDASのジャージを着て、重くゴツいネックレス等の所謂"ブリンブリン"を首から何個もジャラジャラぶら下げていた。他にも成功者の証の為に金やダイヤが埋め込まれた歯のキャップ(グリルズ)を歯に装着するラッパー、見栄を張る為にレンタカーで高級車を借りてボンネットになぜか座るジャケ写、Motorolaの名機スタータック、いまだに世界中で一定のレア感とコアなコレクターをキープし続けているSONY SPORTS、当時のヘッズに人気だったPanasonicの迷彩ショックウェーブをシャカゾンビが雑誌で紹介しているのを見てはそれらが死ぬほど欲しくなっていた自分がいた(当時は買えるお金もなくバッタ物のCOBYを使っていたw)。
Motorolaの名機"Star TAC"。映画"8mm"でニコラス・ケイジが使用したり、当時のハリウッド映画やRAPのPVでも数多く使われていた
ウータン・クランのMethod Manとデフ・スクワッドのRedmanの"How High"コンビが始めた(と思う)、味のする枝や爪楊枝を咥えるというドカベンのイワキのような謎の文化というかファッションもあった。その後僕は上京し、ブッダブランドのNIPPSさんが歯ブラシを咥えながら、朝方渋谷のスクランブル交差点を歩いているのを目撃したことも笑。
HIPHOPの黄金期のひとつでもある90年代中・後期に思春期を過ごした僕は、いまだにこの脳裏にこびり付いて取れない、バカみたいな面白さの呪いをかけられながら生きている。
話はかなり脱線した。無駄に見栄を張る(勿論本当にヒップホップ・ゲームやハスリングで成功して超大金持ちのラッパーやプロデューサーが沢山いるのも事実)、ヒップホップのスタンスは今でも好きで、いとうせいこうさんの言葉を借りるなら"ヒップホップとは発明"、ライムスター宇多丸さんは"常にアップデートを繰り返していくもの"と仰っていて僕もそう思う。HIP HOPとULやMYOGのマインドはある意味相反する思想であるけど、実は根っこの考え方は一緒じゃないかなと。そしてそのスタンスからの物作り、多分誰もやらんでしょっていうことで、NUPの山口さんに相談してみたところ、「えっ..Hustlin' Walletって何すか? スケスケの財布? 面白いっすねそれ」ってことで、このコラボプロジェクトがスタートした。
お金を見せびらかすのなんて悪趣味だろって思う人もいるかな。でもこれは瓦奇岳とNUP DESIGNの遊び心で、パンパンにコインやカードを詰めると独特なボテっとしたフォルムがファニーで可愛い。見方によっては多少透けるくらいだし、使ってるうちに生地がシワシワになって気にならなくなる気も。
シンプルで軽量・コンパクトでかっこいい財布の解説を書くつもりが、長々どうでもいい話を書いてしまった。最近じゃスマホ決済やクレカが使えるシーンがぶっちゃけ殆ど。山以外なら現金持ち歩かなくても結構どうにかなっちゃう昨今で、このくらいシンプルでミニマルな仕様でも慣れれば全く問題なくてむしろ快適。ま、経緯なんか無視して、是非日常からハイク、年中通しで使い倒してもらえたら最高です笑
製品ページ
NUP DESIGN × KAWARAKIDAKE "Hustlin' Wallet"
https://kawarakidake.com/products/nup-kawaraki-hustlin-wallet