- COAST to COAST - 人情に触れる旅!? 千葉・南房総横断トレイル 前編




 実は6月末の3日間をかけてチーム瓦奇岳(といっても3人だけどねw)で東北の名峰、飯豊山を縦走する計画をしていた。まだ残雪の残る小屋開け前の登山者が少ない時期だが、装備やルートの計画は僕らなりに練っていたし、登山口までのアプローチや、水場などの情報を出来る限りで調べ、下山後の車回収のタクシーの手配なども既に完了。が、さすがに梅雨の真っ只中のこの時期、1日くらいなら雨でも構わないと思っていたが、あいにく3日間とも悪天候の予報には誰も抗えず、計画変更が余儀なくされた。天気が悪いならどこか別の場所へと、アルプスや東北方面など散々Windy(超優秀天気予測アプリ)で調べたあげく、どこもダメ。そんな中なぜか唯一3日間晴れていそうなのが、千葉の南房総エリアだった。軽い気持ちで「千葉行っちゃいますか?」と僕がメンバーにLINEで送ったら、「なんかよくわからんが行ったら行ったで楽しいでしょ」って事で行き先は千葉に変更した。


 さてここで問題になるのが「千葉ってどんな山あるの?」ってことだった。知ってる山でも鋸山くらいしかわからない。恥ずかしながら、僕は人生一度たりとも千葉の山を歩いたことが無かった。そう、「千葉といったら海や海水浴や砂浜で潮干狩りだろ」が僕の浅すぎる知識なのだ(千葉の方本当にすみません...)。少しググってみたら"南房総ロングトレイル"がちゃんとあるじゃないか。またTRAILSが紹介していた房総・クジラの道も楽しそうだった。

 というわけで東北の飯豊山から南房総へと、文字通り180度の行き先変更になったイレギュラーな展開だが、千葉の最南端あたりを1泊2日で栃木ハイカー3人で歩いてみようじゃないかということになったのである。


文:小島史郎(kawarakidake)

今回のハイカー:麦(metal hike)、ケンジ(yamaninoborebakigahareru)、小島史郎(kawarakidake)

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6/27(火)
 都内で行われていたアウトドアの合同展示会行き、出展ブランドさんの来春の新製品を隅々までチェックしたり、初対面の方ともご挨拶したり(これでもちゃんと仕事してますよw)、終了後その足で東京駅から内房線に乗り込み、前泊地の千葉・南房総のカッパドキアキャンプ場に向かう。

 僕の今回の旅のスタート地点は岩井駅で、駅から40分程度歩いた道の駅で今回の参加メンバーの麦ちゃんとケンジさんと集合した。道の駅でそれぞれ補給(ぼくは晩酌用のビールとつまみに地元農家さんのお新香。それと翌日の朝食用の菓子パンや行動食に地元の煎餅などを購入)をして、麦ちゃんの運転する車でキャンプ地へと向かう。この日は平日のためガラガラ。むしろ虫の方が遥かに多かったし気温も少し暑かったが、構わず仲間と地べたで話をしながらダラダラと夜を過ごした。


アウトドアの合同展示会に向かう。久しぶりに歩く大都会に少しビビっていたのはここだけの秘密だ。UL装備の小さな20Lバックパックはこんな場所を歩いても浮かない(と思っているw)のが良い


ダイニーマをフライシートに使ったテラノヴァのレーサーパルス1がめちゃくちゃカッコ良い。値段がちょっとお高いので、日本にはそんなに数は入らないのかも。他にも来春に出るソーラーフォトン2の日本限定の新色などテラノヴァがジワリジワリとまたキテる


展示会を無事終了後、いただいた大量の資料(クソ重いw)とMacBook、2泊分の荷物がパンパンに詰まった小さなバックパックを背負い、房総方面行きの内房線快速に乗り込む。さぁこの旅の始まりだ


内房線を君津駅で安房鴨川行きの2両編成に乗り換えた


無人駅である岩井駅に到着


電車の中で飲もうと買った氷結無糖、乗客が多く気まずく飲めなかったので岩井駅〜道の駅間、ひとりプシュっとしながらてくてく歩く


海抜の標識を見ると海の近くを歩いているんだなと実感する ⇨ 旅のテンションでついついなんでもない標識を撮ってしまうw


今回のメンバーと集合した道の駅 「富楽里とみやま」に到着(この夏のリニューアルオープンに向け現在は仮店舗で営業中)



初日のキャンプ地に到着。今回の旅、僕はRabのアルパインビビィのみで寝た。なんたって軽くて十分な防水透湿性能を誇る。屋根もメッシュも無くプライベート空間はゼロのビビィで、カウボーイスタイルがもろもろ物議は醸すだろうが、設営と撤収の速さと手軽さはこれ以上ないんじゃないかと思う。ペグ打ちすら必要無しなのでフライが飛ばされる心配もなく(そもそも無いしねw)、どこでも寝れるし、まっ暗闇や酔っ払いでも問題なくサッと設営や撤収が可能(ただ広げるだけw)。僕みたいなものぐさやガッツリ暗いうちから歩きたいロングの行程にはこれをぜひともお薦めしたい。問題点は荷物が多いとビビィ周辺が散らかりがちになるのと、テン場で他のハイカーに踏まれないか心配になるってことだ


酒のキャリーにはやっぱりこれ。KAWARAKIDAKEのX-1(酒専ボトル)を今回2本持ってきた。中身はサントリーのウイスキー。チーバくんのデザインがかわいいワンカップは道の駅でジャケ買いした


去年の5月頃、イベント限定でお客様に配布した、僕がMYOGで作ったタイベック ショッパー。麦氏は今でもこれをガンガン使ってくれていてガッツリ味が出ていた。コンビニで買ったおにぎりなんかを入れて適当にザックにブッ込むのに丁度いいサイズ感。ラフに使ってるが全く壊れないらしいw これ今度復刻して再販しようかな。誰かとコラボしても面白いかもね

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6/28(水)
早朝、蚊とブヨのブーン音に起こされる。身支度を整えカッパドギアキャンプ場から出発。途中コンビニに立ち寄りこの日の昼食を補給、その後道の駅に戻り、車を駐車させてもらう。係の方に「登山車の方は第2駐車場に停めてね」と言われたのでそちらの端の方に駐車させていただいた。早朝7時半、いよいよこの旅が本格的にスタートした。


まずはロードを歩き、富山(とみさん)を目指す


福満寺に到着。ここから富山の本格的な登山道に入る

天気は曇りながら標高が低くほぼ無風 + 高い湿度で、地味に結構キツイw その後無事に富山の山頂へ。南房総の低山や市街地の向こう側に太平洋が見えた。


暑すぎて、開始早々滝汗のメリノシャツを干しながら歩くケンジさん。TONARI DESIGNのAluminium Hanger -16g-を上手く使ってプロ感を演出しているようだ


山頂手前の東屋で休憩。風が抜けて気持ちのいい場所だった


多少曇っているが、太平洋が見えた。海が見えるとそれだけで嬉しくなるのは海無し県在住の方ならわかるはず


富山の山頂の展望台に上がる






富山を下山し農村部を歩く。自給自足している方も多く畑の手入れもされていて綺麗だった




富山を通過し、伊予ヶ岳を目指す道。途中、果物畑や紫陽花が綺麗な道を通過する。僕をはじめロングトレイルなんて一度も歩いたことのない3人だが、「あ、なんか良いかも。トレイルを繋ぐってこういうことか」ってうっすら気づき始めた時がこの辺り


今回の僕のザックはPEDESTRIの20L。ジッパーの開け閉めが楽で良い。里山を歩くので食料は途中で補給すること前提、かなり削りまくってこのザックに納めた。傘はSMDのカーボン製、ビビィ泊でタープ代わりに使おうと持ってきたが、結局一度も雨に降られることはなく、カンカン照りのロード歩きの中、日傘として大活躍



長いロード歩きを経て、伊予ヶ岳登山口まで到着してひと休み。ザックを枕にして寝るだけで急にこなれたスルーハイカー感が出るのが不思議だ


漫画"ヤマノススメ"にも登場するらしい、千葉のマッターホルンの異名を持つスリリングな名低山「伊予ヶ岳」を登る。距離も短い低山だからと侮るなかれ。結構な急登の場所が山頂付近にあります。ロープを使いながら慎重に進む。ちなみにザックは少し下の東屋にデポした


伊予ヶ岳山頂直下の東屋でプシュっと。ちょっとぬるいがそれでも美味い不思議なドリンクを頂く。ちなみに今回の旅で大活躍したのがRIDGE MOUNTAIN GEARのメリノウール100%の"Merino Basic Tee Short Sleeve"。3日間汗びっちゃでも匂いが気にならずに歩くことができた。瓦奇岳では汗染みもそこまで目立たないカラーのチョコレート、とダークグリーンの取扱をしています。今年の夏の激プッシュアイテムのひとつです



写真中央のぽっこりした山が伊予ヶ岳。下山後の麓の神社から山頂を望む。wikipediaによると千葉で「岳」とつく山は伊予ヶ岳のみらしい


蒸し暑く水場の無い伊予ヶ岳。下山後、どっかでアイスでも売ってないかなーと探しながら歩いてて見つけた、この旅初のエイド、樋田商店。おばちゃんが優しくアイスとコーラやパンなど色々買う。店内には"Qちゃん"ことマラソンの高橋尚子選手が店の前の道路を小出監督と走っているレアな写真や、昭和からそこにあったであろうゴジラのフィギュア、ヤンキー定番の永ちゃんグッズやKYOSHOのラジコン(懐かしすぎるw)などがジャンルレスに展示されている。でもそれがなぜかしっくりくる、とても居心地の良い空間だった。おばちゃんに「あんたたちこんな時間にどっから来たの?」 ってド直球に聞かれたw



本日2回目のスルーハイカーっぽい人w(6月末なのに酷暑のロード歩きで結構体力を削られた)



伊予ヶ岳からのロードを抜け二ツ山(地元ではふたごやまと呼ばれているようだ)を目指す。ここはジャングルなのかってくらいクソ暑く、湿度がMAXのバリエーションルート


波線ルートで、道迷いしやすいので注意が必要(実際僕らも道を外したw)


樋田商店のおばちゃんこと"神様"から「これ持ってきな」とオマケで頂いたPOMの"塩と夏みかん"が激ウマだった。またどこかで見つけたらこれ買います

無事に波線ルートを超え、今回の宿泊地である大山千枚田エリアに到着。地元の農家さんの日々の努力であろう、畦道も綺麗に草刈りがされている。ちなみに大山千枚田は東京から一番近い棚田だ


この"大山千枚田"を守っていくんだと想う、地元の農家さんのプライドすら感じる美しい田園風景。田んぼだけではなく畦道まで美しい。ここはかなり山深い場所で、普段観光客は入ってこない場所だろうが、手入れが完璧に行き届いていて驚く。地元の方の日々の努力の賜物だと思う


本日のテン場、民泊五郎兵ヱ(ごろべー)に到着。テン泊から急遽素泊まり(3,500円)に変更した麦氏と、軒先テント泊のケンジ氏、地べたビビィの僕。こんなところでも格差社会を感じることになるとはw な、なんと水道、トイレ、シャワーまで貸して頂いた上に、採れたてのキュウリと朝食のパンまで頂いてしまった....。優しいごろべーのご夫婦には頭が上がらない(涙)


部屋に入るなり、地図を広げ、自分の家バイブスを出しまくりの麦氏。流石はリーダー、山と高原地図の南房総編を広げ、明日のルートチェックにも余念がないようだ。奥にある扇風機が快適そうに回っているのが腹立つw


僕はみんなの今晩のお酒や、つまみを買いに里まで歩いて降りる。その途中、民泊ごろべーの夫婦に車から声を掛けていただき、なんと後ろに乗せていただいた。ちなみに僕が目指していた、Google Mapにコンビニエンスストアと書かれていた某店は「あそこは豆腐しか売ってないし、高いからだめよ」「若い人はセブンだよね」とご夫婦は自分たちの行先を変更して車で10分以上走ったセブンイレブンまで乗せていただく(泣)。移動の車中で翌日のお薦めルートを聞いたり、話が盛り上がる中「ところであんたたち仕事してるの?」 ってド直球に聞かれたw



コンビニから戻ると陽はバッチリ落ちていたが格差社会は全く変わっていなかったw



この旅、影の功労者ギアが瓦奇岳でも取扱をはじめたばかりのTakaのアルスト、"Bull Stove"。レッドブルの空き缶を再利用してMYOGった栃木のハイカーさん制作のもので火力も十分。こちらは2750円(税込)で店舗にて販売中。TMRのW.R.クッカーとの組み合わせも相性良く完全沸騰したお湯で、熱々のカップヌードルを食べることができた

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そんなに長いテキストにするつもりはなかったのですが、折角なので続きは後編にします(えっ引っ張るんかいw)