COAST to COAST - 人情に触れる旅!? 千葉・南房総横断トレイル 後編



東北の飯豊山から南房総へと、文字通り180度の行き先変更になったイレギュラーな旅の後編。千葉の最南端あたりを1泊2日で栃木ハイカー3人で歩いてみようじゃないかということになった珍道中記。前編はコチラ


文:小島史郎(kawarakidake)

今回のハイカー:麦(metal hike)、ケンジ(yamaninoborebakigahareru)、小島史郎(kawarakidake)

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6/29(水)
 朝4時過ぎ、本日も蚊とブヨのブーン音で起こされる。一昨日から続く、虫たちとのウザすぎるバトルも今日で終わりかと思うと少し寂しくなっている自分がいた。ふと離れをみると麦氏はまだぐーぐーと寝ているようだ。相変わらず網戸の奥で扇風機が快適そうに回っている。庭でテント泊のケンジさんもまだ寝ているので、ひとり大山千枚田まで歩いてみることにした。昨日の夕方も行ったのでそこまで感動は無いかななんて思いつつ歩いていくと、朝日が当たりとても綺麗な田園風景が広がっている。多分生涯で初めて田んぼを心から美しいと思ったような気がする。棚田の写真をバシバシ撮りひとり佇んで悦に入っていると、俺、実はちょっとヤバイやつなんじゃなんて思ったりもするがまぁ気にしない笑。ここはそういう場所なんだ(朝で誰ひとりいないし)。

 その後テン場(民泊の庭)に戻るとメンバーが起き出していて、前日にごろべーの女将さんにいただいた食パンを頂き、今日のルートを確認した。当初はヒルが多いと言われているトレイルを歩いて江見駅までスタコラ歩いてゴールする予定だったが、昨日の夕方、女将さんに教えていただいた、稜線を降りて太平洋まで歩くルートが気持ち良さそうだったのであっさり変更する事にした。なんとなく南房総の西海岸から東海岸ってのも風情があって面白い気がするし、42kmでロングディスタンスなハイカーさんにしたらクソ短いと思うけど、僕らにとっては十分な距離だった。お世話になった女将さんに別れのご挨拶と、地元ローカルしかわからないであろう、この先の分岐ルートまでの細かい行き方を教えていただき、精算をして朝6時頃出発した。

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これから通るトレイルやお薦めスポット、自衛隊基地周辺の通り方の詳細やヒルに関しての情報などを女将さんに教えてもらう。ここではローカルこそ最強で、スマホでGoogle検索など何の役にも立たないのだ。ちなみに僕が持っている地図は出発直前に飼い犬のトンちゃんにちぎられたのでボロボロw


この3日間、蚊やブヨに刺されまくっていた我々。やっぱULでもバスタブとメッシュはあったほうがいいとか、透湿性があーだこーだとスペックの話ばっかしていたがゴロベーの母屋は窓全開、網戸無しのハードコアなフルオープンスタイルに我々は震えたw


出発後、早々何かの忘れ物をしてゴロベーに戻る麦氏を待つ図。女将と別れの「行ってきます」したのにまた戻るのって恥ずかしいだろうなと思ったw


二ツ山から愛宕山周辺へ向かう


麦氏(左)のザックはPEDESTRIのサンプル、ケンジさんはZpacksのNERO38L(現在廃番のDCF VER.)

愛宕山山頂は頂上付近が自衛隊の管理区域であり、許可を得なければ立ち入ることができないが一週間前に申請を出すとなんと山を登ることもできるとか。一般人が基地に入れるなんて一度も考えたことがなかったが、日本の自衛隊も意外とゆるかったりフレンドリーな部分もあるんだなと思った。この場所に行かなければ知る由もないが、主体的にDIGれば低山だろうが面白い発見がある。


早速の暑いロード歩きに体力を削られるが、「若い人はセブンだよね」でお馴染みのセブンイレブンで前日に補給した、おにぎりと塩の半熟ゆでたまごが全身に染み渡る。ちなみに写真の奥が愛宕山のある航空自衛隊の基地の入り口でゲート付近の自衛官の方に怪しまれていた気がする


大きなソテツが至る所に確認できてプチ南国気分を味わうチームの皆様



地元の方々からマキシマムリスペクトされている(のかな?)水田大臣誕生の地の看板

その後ロードを歩き途中にあった美しい旧水田家住宅【国登録有形文化財】に立ち寄る。茅葺き屋根の歴史的建造物で屋根の茅葺は今では職人が少なく、莫大な予算をかけて定期的に葺き替えるとのことだった。建物の床が宇宙一綺麗か、ってくらいピカピカだった。スタッフさんの弛まぬ努力の成果だろうなと思う。



水田家の入館料はまさかの無料! 記帳しないでしれっと入館しようとしたら、マメな麦氏に「ちゃんと記帳しなさい」と怒られる私


「まだ歩くんだっけ?」「え、そうなの?」「歩かないでしょ」永遠に続くこのネタ


山感ゼロw


スナイパーの如く、外に睨みを利かす麦氏。まさか裕次郎にでも憧れているのだろうか? ここはそっとしておいたほうがよさそうだったのでスルーしたw


マニア向けの茅葺き屋根の内側写真。あまりに雨量が多いとやっぱり漏れるらしい


麦氏が何か武将ネタをやってゲラゲラ笑ったが何やったか忘れた。床がとにかく綺麗

水田邸を出てからもひたすら灼熱のロードを歩く。下り基調だから良かったもののとにかくクソ暑い。水田家にワンチャンの自販機を期待したが、ストイックで美しい水田家にそんなハイテク物は必要無いようだ。その後も自販機をひたすら探しながら歩く旅。


今回の最終トレイルのルート89、ではなく県道89号のスタート地点に着いたところ。ただひたすら灼熱地獄のロードを歩いて海まで行く




綺麗な田園風景を歩く。ごろべーの女将さんのお薦めトレイルは「あぁやっぱり全部ロードだったのね」とここら辺で完全に理解する我々。飯豊を諦めて、こんな展開にならなければ歩くことも絶対に無かったであろうこの場所を歩ける幸せを噛み締める3人(オイ、ずいぶんとお前ら大人になったなw)


この日も暑く長いロード(県道)歩きに日傘が大活躍。この時期は必須装備といっても過言ではない


途中の良い感じの日陰を見つけては休憩。全く急がない旅。いつもパッキングが綺麗でマメなケンジさん。めんどくさがりで「入ってれば一緒でしょ」な僕とは正反対の性格だ



途中のエイド、佐藤酒店を見つけてすかさずキンキンに冷えた黄色い液体を体内に補給して生き返る私。店内には数時間前に立ち寄った、水田家の案内係のスタッフさんが昼休憩でここにワープしていてまさかの再開。佐藤酒店さんとは知り合いでよく立ち寄るとのこと。そう、世間とは僕らが思っているより遥かに狭いのである(ドラクエでありそうな展開だなと思ったw)


またまたパッキングの最終調整をするケンジさん。いつも忙しそうだw


遂にゴール地点の太海(ふとみ)の標識が現れた図。寂しい気もするがやっぱり嬉しい


ゴールまであと僅かだ。24時間テレビならサライが流れているシーンだろうか




遂に着いてしまった....嬉しいような寂しいような。ちょっと感傷的になった



ノリノリでKポーズをする2人と絶対やらねー奴
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太海のローカル御用達の定食屋、まるよ太海店に入るも疲れ切ってこの顔である


アワビがゴロゴロ入ったラーメン+ミニカレーセット(左)と、めちゃくちゃデカく柔らかなアナゴ天丼(右)を食べるチームの皆様。この3日間の食べた飯があまりに貧相だったので、超絶に美味かった


美味い飯食って生き返った人。まるよ太海店はほんとお薦めです。また行きたいお店



ハイカートラッシュな我々。電車に乗客が少なければ良いなと思っていたが、高校生の下校時刻と被り皆様と仲良く乗車させていただきましたw 勿論車両端っこの位置をキープ


無人駅の岩井駅まで約1時間かけて電車で戻り、スタート地点の道の駅までもどり車を回収して本当にゴールした。この後はどうでもよくなったのか写真は無かったw

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あとがき

飯豊からまさかの千葉南房総横断トレイルになるとは。どうせならスタートを房総半島の太平洋側の海にしておけば良かったなとか後から思ったけど、そもそもゴール地も変わったしね。COAST to COASTなんてカッコつけたタイトルですが、スタート地点は海ではなく、普通の道の駅です(失敗したw) 全42kmの旅を終えて思うことは、名も無き人々が一番カッコ良かったなってこと。特に"樋田商店"のおばちゃんと、"ごろべー"の女将さんは印象が強く、長年生きてきたからこその一言一言がパンチラインでいちいち重く、またいつかお会いできる機会があれば良いなと思っております。"ごろべー"の女将さん曰く「うちの民泊は常連さんしか泊まらないけど、なんで知ってるの?」って言われたりしたけど、それも納得できる、とても居心地の良い"田舎のばあちゃん家"的な民泊でいつまでもダラダラ泊まっていたくなるような、のんびりとした空間でお薦めです。

最後にこの旅を一緒に行ってくれた仲間と家を空けて送り出してくれた家族に"ありがとう"と感謝の言葉をここにこっそり記して締めの言葉とさせていただきます